多裂筋(たれつきん)という筋肉を知っていますか?多裂筋は背骨全体についている筋肉で体を反らす伸展や、横へ曲げる側屈、体を捻る回旋などの動きをする時にはたらく筋肉です。そして背骨の安定性には多裂筋が欠かせません。
腰痛と関係が深い多裂筋とは
多裂筋は、腰椎・胸椎・頸椎と背骨全体に伸びている筋肉で、背骨にそって左右両側にあり、多裂筋は腰椎で非常にボリュームがあります。
青い箇所が左の多裂筋です。(表層の筋肉を取り除いてます)
参考:Visiblebode
これは、第3腰椎の横断面図ですが、多裂筋と脊柱起立筋がほぼ同じボリュームです。ここから下位にいくと、多裂筋の占める割合がもっと大きくなります。
出典:機能解剖学的触診技術(下肢・体幹)
「腰部」多裂筋の走行
腰部の多裂筋は6つの筋線維の走行があります。
➀棘突起と2つ下位の乳頭突起、椎間関節をつなぐ筋線維
②第1腰椎棘突起と上後腸骨棘周囲をつなぐ筋線維
③第2腰椎棘突起と上部背側仙腸靭帯をつなぐ筋線維
④第3腰椎棘突起と下部背側仙腸靭帯をつなぐ筋線維
⑤第4腰椎棘突起と仙骨下部背面外側をつなぐ筋線維
⑥第5腰椎棘突起と正中仙骨稜の両側をつなぐ筋線維
出典:機能解剖学的触診技術(下肢・体幹)
多裂筋の働きは、左右同時に筋肉が働くと体を反るような動きをします。これを伸展動作と呼びます。
そして、右左どちらか片方の筋肉が収縮すると、筋肉が力を出した側に体を倒す動き(側屈)と反対側に体を捻る(回旋)働きをします。
なぜ多裂筋と腰痛は関係あるのか?
多裂筋は、インナーマッスル的な筋肉なので腰椎の安定性に深く関わっています。土台を安定させる役割を担っています。
肩の時にもお話しましたが、インナーマッスルは関節の安定を保つはたらきがあります。
積み荷が崩れないように縛っておくロープのような。
腰痛症の人は、そうでない人に比べると筋肉の働き方に違いがあり、多裂筋の萎縮(痩せて細くなる)も見られることが研究でも明らかになっています。
腰痛が無い人では、インナーマッスルである多裂筋が収縮して、背骨を安定させてから脊柱起立筋などのアウターマッスルが働きますが、長期的に腰痛がある人では、多裂筋の働きが遅れることがわかってきました。
多裂筋の働きが遅れることで、腰椎の軸が保てないまま運動することになります。(不安定な姿勢で運動することになる)
多裂筋の運動が遅れるということは、腰椎や仙骨を支える土台が弱いままで脊柱起立筋が働くことになります。すると、腰部への負担は増加します。
椎間関節や椎間板への負担が強くなることで、腰痛への近道を歩むことになります。
この悪循環を遮断しない限り、負のループが続くことで、慢性腰痛からの脱出が難しくなってきます。
スポーツ選手やウェイトトレーニングをやって脊柱起立筋のボリュームはあるけれど、腰痛に悩まされていたり、良い姿勢を長く続けるのが苦手という方は、浅層筋の脊柱起立筋は発達しているのに対して、深層筋である多裂筋などの働きが弱くなっている可能性があります。
参考までに:「関節を安定させる筋肉関節を動かす筋肉とは」
スポーツやトレーニングで腰痛に悩んでいる時は、多裂筋の問題が関係しているかもしれませんね。
多裂筋と仙腸関節の問題
多裂筋は、股関節の筋肉である大殿筋と筋連結があります。
多裂筋と大殿筋は、仙腸関節に関係する筋肉です。
多裂筋は仙骨のうなずき運動、大殿筋は股関節の伸展や腸骨を立てるような働きがあります。
多裂筋の萎縮が起こったり、弱くなると、支えが不十分になり仙腸関節への負担が大きくなります。
特に骨盤の後ろにある、上後腸骨棘付近では痛みに敏感なセンサー(侵害受容器)が豊富なので、仙腸関節の問題に対しては、上後腸骨棘付近の痛みを感じることが多くなります。
青〇部分が上後腸骨棘付近の痛みです。(仙腸関節痛でよくみられる)
仙腸関節の痛みに対しても、多裂筋の見直し、大殿筋や中殿筋など股関節を支える筋肉とのバランスが欠かせません。
多裂筋は梨状筋症候群にも関係する?
梨状筋症候群とは股関節を支える筋肉、梨状筋の影響で坐骨神経を締め付ける(絞扼)ことでお尻や下肢に痛みやしびれを感じる症状です。
梨状筋は、仙骨から出発している筋肉です。
参考:Visiblebody
多裂筋が弱くなると仙骨のうなずき運動の働きが少なくなることで、梨状筋や大殿筋などとのバランスが崩れることになります。すると、梨状筋により坐骨神経を締め付けられる現象がおこります。すると、殿部に痛みを訴えたり、下肢に痺れが出るようになります。これが坐骨神経痛です。
お尻の痛みや下肢に痺れがでる症状は、腰椎椎間板ヘルニアなどでもでる症状なので、見極めも必要になります。
多裂筋のトリガーポイントで腰痛がでる場合
多裂筋にトリガーポイントができることで、腰やお尻に痛みを出す場合もあります。
トリガーポイントは、原因になっている場所と少し離れたところに痛みを発することが特徴です。
×印の部分がトリガーポイント部分で、赤色は関連痛が現れる場所です。
出典:トリガーポイントマニュアル
多裂筋のトレーニング方法
弱くなっている多裂筋を強化する運動は、バードドックが一般的で誰でも取り組みやすいです。ただ、深部の筋肉が弱いと安定感が取り辛くふらふらします。(繰り返しやってると安定してきます)
多裂筋の活性化は、高負荷をかければいいというわけではないので、自分の下肢の重さで十分に刺激されます。
「高い負荷をかけると、脊柱起立筋が優位に働き多裂筋の働きは低くなると言われているからです
デッドリフトなどの高重量でやっても多裂筋を狙ったトレーニングには向いてないということです」
四つ這いになり、片方の上肢を体幹と平行に上げて、対角の下肢を水平に上げるポジションですね。
より多裂筋を働かせるために、ドローインや下肢を上げる位置を変えるなど、ちょっとしたコツはありますが、まずはこの姿勢を取りながらバランスを保ちましょう。
多裂筋のストレッチングは?
腰部多裂筋のストレッチ、誰でも簡単に出来るのは、ヨガでいうところの猫のポーズで背中を丸くしていくときに多裂筋もストレッチされます。また、床に正座をして背中全体を丸めるようなポジションにすると、腰部多裂筋がポイントで伸ばされていることがわかりやすいので試してみてください。
ここで、骨盤の後傾を意識してもらうと、腰部がよりストレッチされていることが感じられます。
多裂筋は、腰椎と仙骨を結んでいるので骨盤の後傾により、多裂筋が頭側と仙骨側に伸ばされるような力が働きます。そのため、ストレッチの際には、骨盤の後傾を意識した方が、多裂筋のストレッチ感がわかりやすいです。
最後に
多裂筋(たれつきん)という言葉を聞いたことが無い方もいたと思いますが、スポーツ障害から日常の慢性腰痛やぎっくり腰など運動器が原因で起こる腰痛の問題は、多裂筋が絡んでいることが多いので、腰痛でお悩みの際には多裂筋のことを意識してみてください。
今回は、これまで。
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